空調服には様々な種類がありますが、中でも袖がないベストタイプは腕が動かしやすく、安価で購入できるのが特徴です。また、体温が籠りにくいので涼しい着心地を長時間維持できるのも大きなメリットといえます。
ベストタイプの空調服は作業環境によってはもっとも快適な着心地と言っても過言ではありません。袖の有無による機能の違いやサイズの選び方について学びましょう。
⇒綿100パーセントの生地で作られたベストタイプの空調服が活躍する現場や扱い方について
空調服の袖部分は機能性や安全性が大きく関係する
空調服は大別すると袖ありと袖なしがあり、袖なしはさらに半袖とベストに分かれます。
ファンで取り込んだ空気を衣服の内側に流して層を作り、外気の熱をシャットアウトするのが空調服の仕組みです。体全体に涼しさを感じさせるなら手首まで覆うことができる長袖が最適と言えますが、涼しい一方で腕が動かしにくくなる事実は無視できません。
空気の層が形成されると空調服が膨らみますが、これは生地の気密性が高く、取り込まれた空気の逃げ場がないためです。空気の層は空調服を膨らますのと同時に体を圧迫します。その圧力は僅かではあるものの、腕の動きを妨げています。
緻密な作業が要求される仕事では腕の動きに問題があってはならないため、長袖の空調服は不向きと言えるでしょう。また、長袖の欠点として生地の引っかけや巻き込みが挙げられます。腕を動かした際に鋭利な物や作動中の機械に誤って触れてしまい、生地が傷んでしまうのです。
空調服が破れると気密性が損なわれますが、見方を変えれば袖があったおかげで怪我をせずに済んだとも言えます。半袖やベストでは腕が露出した状態なので、場合によっては深い傷を負ってしまう可能性は否定できません。
涼しさや安全性を取るか、腕の動かしやすさを取るかで空調服の選び方は大きく変わると言えます。
体温が籠りにくく体を動かしやすいのがベストの利点
肩の部分から袖がないベストタイプの空調服はファンで取り込んだ空気が即座に抜ける構造です。一見すると遮熱性を維持できないように思えますが、常に空気の流れが生じているので実際は一定の遮熱効果があります。また、常に排気されている状態とも言えるため、体温が衣服の内側に籠らないのも見逃せない利点のひとつです。
外気の熱を遮ることができる空調服ですが、生地の気密性が仇になり、発生した体温が外に漏れにくくなっています。涼しさを得るための空調服ですが、あまり長く着続けていると次第に体温の影響で暑く感じてしまいます。
その点、ベストタイプなら常に新しい外気を取り込みつつ、胴体を経由して肩から排気される流れができ上がっているので体温が籠る心配がありません。また、ベストタイプの空調服は空気の層による生地の膨らみで腕の動きが妨げられることがありません。
袖がないので腕の部分が圧迫されず、自由に動かすことが可能になっています。半袖も長袖と比較すればあまり圧迫されませんが、それでもベストには敵いません。空気の層が形成されないので腕が外気の熱に晒される欠点はあるものの、ベストタイプの空調服は長時間の着用に最適と言えるでしょう。
袖がない分、安価で購入できるのもベストならではの利点のひとつです。
ベストの空調服はサイズ選びを慎重に行う
どのような衣服も自分の体に適したサイズを選ぶことが大切ですが、ベストタイプの空調服に限って言うなら選ぶための基準が少し異なります。通常の衣服は胴体と両腕の大きさがサイズを決めますが、ベストの場合は胴体部分だけです。
肩から腕にかけての部分は考えないため、同じサイズ表記でも袖がある衣服とベストでは実寸が異なる場合があります。空調服は空気の層で生地が膨らむことを想定してサイズを決めているのでこの傾向が顕著です。腕の動きを考慮した結果、袖がある空調服はやや大きめに作られています。
一方でベストは腕の動きを妨げる袖がなく、腕の動きに関係ない胴体部分だけをカバーしている形状です。メーカーによっては他の衣服よりも小さい物があります。ベストタイプの空調服を試着する際は着心地に注意する必要があります。
袖がないベストは腕が引っかかって着ることができない、ということはほとんどありません。空気の層が形成されないほどに小さいサイズでも着用自体は可能なので、遮熱性が保てない状態のままで着続けてしまうおそれがあります。
胸やお腹がきついと感じなくても実はサイズが小さいというケースは珍しくないので、試着した際はベストの内側に手を入れてすき間の有無を確認することが重要になります。
空調服の送風機器は消耗品なので定期的な交換が必要
空調服に関するありがちなトラブルとしてファンなど送風機器の故障が挙げられます。使用中に突然ファンが止まった、バッテリーが充電できないなどトラブルの内容は様々ですが、その多くにおいて空調服を購入した際に付属している送風機器をそのまま使い続けている共通点があります。
風を送るファンは使用頻度によって多少の違いはあるものの、約三年から四年で交換しなければいけません。それ以上長く使い続けるとモーターの性能が著しく低下し、回転数の減少によって空気の層が薄くなってしまいます。
また、ファンの電源であるバッテリーも次第に性能が低下します。出力の数値や充電の回数で寿命が変わるのが特徴で、送風機器の中ではもっとも早く劣化すると言っても過言ではありません。バッテリーの寿命は約三千時間から三千五百時間程度なので、毎日使い続けたら二年程度で交換しなければいけません。
空調服を快適に着こなすためには送風機器の状態が良いことが重要な条件なので、こまめに状態を確認して少しでも不具合があったら速やかに新品へ交換するのが賢明な対処法と言えます。
ベストタイプの空調服の洗濯方法
空調服は他の衣服と同様に洗濯ができますが、生地の気密性が損なわれるので乾燥機を使うことはできません。洗濯機で洗った後は水気を切り、風通しが良い日陰で乾かすのが生地を傷めずに汚れを落とす正しい方法です。ベストタイプの空調服は袖がないので型崩れしにくく、乾いた後はそのままハンガーに吊るして保管することが可能です。
利便性が高いベストタイプの空調服
袖がないベストタイプの空調服は腕の部分が外気の熱に晒される欠点があるものの、それ以上の様々な利点があります。特に腕を動かしやすい利点は緻密な作業が要求される作業現場において重要な事柄です。ベストタイプの空調服は高度な技術力が求められる仕事に最適な作業服と言えるでしょう。
洗濯した後はそのまま吊るして保管できるのも利便性の高さを示しています。
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